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     Ferret’s Tail -8-


 ハーマイオニーは一人廊下を急いでいた。たった今図書館から借りたばかりの本を顔が隠れるくらい積み上げて。大広間に続く角を曲がったところで本の向こうにシルバーブロンドがちらついて、思わず立ち止まった。積み上がった本の隙間から廊下の先を見ようと首を伸ばす。
「何か用か?」
「きゃっ!」
 目の前から声がして、驚いたハーマイオニーは本を廊下にぶちまけてしまった。慌ててしゃがみ込んでそれを拾い集める。頭の上から呆れたため息と嫌味な声が降ってきた。
「本にしか興味がないその頭をどうにかできないのか?」
「う、煩いわね! だいたいあなたが急に声をかけるからいけないんでしょう? それに私がどれだけ本を読もうとあなたには関係ないわ!」
 床に積み上げた本は、半分怒りに任せて置いた最後の一冊のおかげで再び崩れてしまった。もう!と呟いて伸ばされた手の先にあった本がひょいと退けられる。白くて長い指が散らばった本の上を規則正しく動いて、さっきハーマイオニー自身がやったのとは正反対に綺麗に積み上げられていく。予想外の出来事に固まったハーマイオニーが言葉を返せないでいるうちに、ドラコは全て片付け終わって本の山を床から持ち上げた。
「悪いが今の言葉は訂正させてもらう。まず、僕は急に声をかけていない。それを言うなら前がよく見えないほど本を積み上げていたお前が悪いだろう。それから、お前の本好きは僕に関係あるんだよ」
「な、何だって言うのよ!」
「いつもいつも本の話ばかりして……本当にうんざりだった」
 ドラコはそう吐き捨てるとハーマイオニーの手に無理やり本を乗せて、何事もなかったかのように横をすり抜けていった。ハーマイオニーは本の重さに少しよろけた体をかろうじて留め、振り返って声を上げた。
「ちょっと!」
 ドラコの足が止まる。ハーマイオニーは彼に今すぐ立ち去る気がないのを感じて、大きく深呼吸をした。そうして震える声で小さく言う。
「あなたやっぱり……そうだったの?」
 ドラコが頭だけ後ろに向けてハーマイオニーを見た。その顔には独特のシニカルな笑みが浮かんでいる。
「何の話だ?」
「私……」
 ハーマイオニーは俯いて軽く唇を噛む。その先を続けようかどうしようか迷っているようだったが、乾いた唇をぺろりと舌で潤すと顔を上げて言った。
「……あの子に言ったこと、全部本当だから。嘘ついて、ないから」
「僕にはさっぱりだな。グレンジャー、本の読みすぎでとうとう頭がおかしくなったんじゃないのか?」
 ハーマイオニーの目を逸らさないでドラコは温度のない言葉を落とす。ハーマイオニーがまだ何か言おうとしているのに気付くと、くるりと前を向いてそこに言葉を被せた。
「まずは自分に見合った本の量を考えろ。それからあの赤毛に忠告しておいてやるよ。本に彼女を取られないように、ってな」
 そのままスタスタと廊下の角に姿を消したドラコを見つめながら、ハーマイオニーは顔を真っ赤にすると抱えた本ごと床にぺたりと座りこんでしまった。
「やっぱりそうなんじゃない……」
 そうして自分の目の前に積み上げられた本の山をぼんやりと見つめる。ふと一番上の本に手を伸ばした。『マグルの童話100選 魔法という目を通して』―――パラパラとページをめくって目的のところで手を止める。野獣と心を通わせた娘。そんなことは不可能だと思っていたあの時の自分に今の姿を重ねる。野獣は娘を愛し娘に愛されたが故に魔法を解かれ、元の姿を取り戻した。果たして自分は……。
「心を通わせることくらいは出来たと思ってたんだけど……」
 単なる思い上がりだったのだろうか。相手の気持ちがわかったと、勝手に思い込んでいただけなのだろうか。だけどあの時、あの中庭で過ごした時、確かに彼女は彼女のままでいられたのだ。ハーマイオニーは本の表紙をなぞりながら、ついさっきここを走った綺麗な指を思い出す。同じことが彼にも起こったと信じていいのだろうか。ハーマイオニーの代わりに綺麗に本を積み上げていく手の動き。最後に落としたほんの少しの気遣い。
「不自由な人なのね」
 あの時見せた彼の姿が本当の彼なのだとしたら。今まで見えなかったものが見えた、とハーマイオニーは顔を綻ばせた。
 
 シルバーブロンドが消えた方に暫く目をやってから、よし、と小さく自分に言い聞かせると、ハーマイオニーはくるりと回って廊下を歩き、大広間へ消えていく。
 キュウ、と小さく鳴く声は彼女の耳には届かなかった。


Fin.
[←Back] [Atfer words→]

***
どうもドラコ氏に言葉をもたせるとナルちっくになります。あわわ。なぜ。
だってもう「シニカルな笑み」とかナル用の言葉じゃん…!
基本的に系統が似てるのかなって思います。

終わりが中途半端で申し訳ありません。あとがきは次の日記にて。
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