思うがままにつづったこころの中。その2
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Angels and Heroes
雪が止んだ。
あたりに広がったのは白く染まったホグズミードの町並み。
「はぁぁ…寒っ」
ハーマイオニーは息を吐いたが、それはまわりの白に溶けて消えていった。
ここは店が立ち並ぶ通りから少し外れた所で、人影は全くない。
それがハーマイオニーの心を余計と淋しくさせた。
「ジニーも行っちゃったし…」
一緒に来たジニーは、ついさっきデートの時間だと言って去ってしまった。
「仕方ないわよね」
ハリーとロンは、今日はいない。
こんなときに限って、宿題に追われている。
もう毎回のことだから、今回ばかりは、と二人を置いてきたのだった。
「でもつまんない…」
「珍しいな」
「え?」
聴こえるはずのない独り言への反応に、ハーマイオニーは振り返った。
「マルフォイ…」
そこにいたのは漆黒のコートに身を包んだドラコ。
彼のシルバーブロンドは、白い雪の世界でもよく映えている。
ハーマイオニーは反射的に眉をひそめた。
「珍しい、って何が?」
「独りでいること」
「あぁ……色々あるの。貴方には関係ないわ」
「ふぅん」
それだけで何も言わないドラコに、ハーマイオニーはくぃと首を傾げる。
「貴方こそ珍しい」
「独りでいることか?」
「それもあるけど……口数が少ないわ」
「まぁな、色々あるんだ」
ドラコは俯いて微かに笑う。
「………」
少しの沈黙の後。
ハーマイオニーはくるりと方向転換して、橋へと足を進めた。
欄干に手をかけて、遥か下方を流れる川を追いかける。
キシリ、と小さな音がした。
「…変な感じ」
「何がだ?」
「いつもイラッとするのよ。人を見下したような貴方の笑顔」
「あぁそう」
「でも今日は違う。…そういう顔、出来るとは思わなかった」
「酷い言われようだな。普通に笑う時だってある」
今度はクスリと笑う。
「滅多に見せないけどな」
そう言ってドラコも橋へ歩き出した。
ハーマイオニーが足音に気付いて顔だけで振り向く。
「じゃあ余計に変だわ」
キシリ、という音はドラコの足音にかき消された。
「どうしてそんな顔、マグル生まれの私に見せてくれるのかしら?」
「…それは」
ドラコがためらいがちに言葉を落とし、顔を上げたその時だった。
バリバリッという木の裂ける音。
ドラコの足が止まる。
まるで誰かが時を操る魔法をかけたように。
彼の目の前で、ゆっくりと、ハーマイオニーの身体が傾く。
彼女の身体が、前のめりに倒れていく。
ドラコはそこで状況を理解した。
ハーマイオニーの驚いた顔が橋の下へ消えていく。
次の瞬間。
「つっ……」
「マルフォイ…!」
ハーマイオニーが「落ちる」と覚悟した身体は、
ドラコの右手に繋がれて、橋の僅か下で揺れていた。
遥か下を勢いよく流れる水の音が聴こえる。
ふと視界を巡らすと、思ったより遠くに川が見えた。
「や…どうしよ…」
「バカ…下を見るな…!」
「でもっ」
「平気だから!…絶対に離すなよ」
どうやら手袋が滑るらしく、ドラコはハーマイオニーの手を掴むのに必死になっていた。
「…あ、杖!」
ハーマイオニーが唐突に思い出して、ポケットを探る。
彼女の身体が大きく揺れた。
「おい、動くな!たぶん、落ちた…っ」
「ウソ!……じゃあ貴方のは?」
「こっちの方が、早い…!」
ドラコはそう言うと、片方の手袋を外して腕を引っ張る。
ハーマイオニーの腰に手を回すと一気に引き上げた。
「「…っ!」」
雪の積もった橋の上に二人で倒れこむ。
「っ…はぁっ…」
息を整えること数秒。
ドラコの上に乗っていたハーマイオニーが慌てて起き上がった。
「あっ、ごめんなさい!」
「いや…」
ドラコは立ち上がってコートに付いた雪をはらう。
ハーマイオニーはそんな彼を見ながらぽつりと言った。
「ね、マルフォイ…」
「何だ」
「あの…」
「何だよ」
「…ありがとう」
「……別に」
ドラコはもう片方の手袋を外しながら、何気なく言った。
「うん…」
ハーマイオニーはふぃと俯く。
ドラコはついさっきまでハーマイオニーを支えていた欄干に手をかけた。
今はその根元がすっかり折れて、大きく外に傾いていた。
「木が腐ってたみたいだな」
ドラコが欄干を少し揺らすと、今度はギシギシと大きな音がした。
「や、危なっ…」
「音がしたような気がしたんだ」
ドラコが川に視線を落として呟いた。
「もっと早く…」
「え?」
小さな言葉が拾えなくて、ハーマイオニーは思わず訊き返す。
するとドラコはハーマイオニーの方を向いて、
「こんな面倒なことはもうごめんだ」
ニヤリと笑った。
「じゃあな。…もう時間切れだ」
手袋をふいと振り、すれ違う。
ハーマイオニーの脇を、ふわりと風が吹いた。
いつも見ていたいやな笑顔だったはずなのに、
ハーマイオニーの心には何か引っ掛かりがあって。
「マルフォイ!」
振り返って呼びかけた。
ドラコはその場で立ち止まる。
「あの、ひとつ訊きたいんだけど…」
「……」
「…どうして助けてくれたの?」
「……」
「ね、マルフォイ…?」
「……」
もう一度声をかけようとしたその時。
「気の迷いだ」
ハーマイオニーに背を向けたまま。
たった一言。
それだけ言うと、ドラコは早足で賑やかな町並みへと続く道を歩いていった。
ハーマイオニーだけが、独りぽつんと、取り残される。
「何よ、それ…」
漆黒の後ろ姿を見つめながら、
「じゃあ何で笑ってくれたの…?」
ぽつりと、小さく呟いた。
**********
(どうして助けたのか、なんて)
「答えられるわけ、ないだろう…」
わからなかった。
なぜ彼女を助けようとしたのか。
わからないけれどあの時。
それまで押し込めていたのもが一気に溢れだしたように、身体が動いた。
思考とは無関係に、そして気付けば手を取っていた。
賑やかさを避けた裏道で、ドラコははたと立ち止まる。
さっき降りだした雪が、ドラコの肩に積もっていく。
ふと、ひとつの答えが頭を霞めた。
それはぼんやりと、しかしかなりの圧力でドラコの心にのしかかる。
認めるわけには、いかない。
わかっている。
だけど。
もう気付いてしまったから。
きっと、止められない。
「…くそッ」
手袋を地面に投げ捨てて、その場に膝をついた。
「なんでだよ…」
すっかり冷たくなった手で顔を覆う。
次に静かに紡ぎだされた言葉は、
白い息と一緒になって雪の中へ溶けていった。
「好きなんだ……」
***Fin.***
Brian Littrell「Angels and Heroes」がモデル。
…よくよく考えると、ずいぶんハーがドラコに優しいですが、
彼女の方もドラコをちょっと意識している…という設定でお願いします笑。
加筆修正あり。
…やっぱりドラコはナルちゃんと被るなぁ。漆黒被り。くふ。
雪が止んだ。
あたりに広がったのは白く染まったホグズミードの町並み。
「はぁぁ…寒っ」
ハーマイオニーは息を吐いたが、それはまわりの白に溶けて消えていった。
ここは店が立ち並ぶ通りから少し外れた所で、人影は全くない。
それがハーマイオニーの心を余計と淋しくさせた。
「ジニーも行っちゃったし…」
一緒に来たジニーは、ついさっきデートの時間だと言って去ってしまった。
「仕方ないわよね」
ハリーとロンは、今日はいない。
こんなときに限って、宿題に追われている。
もう毎回のことだから、今回ばかりは、と二人を置いてきたのだった。
「でもつまんない…」
「珍しいな」
「え?」
聴こえるはずのない独り言への反応に、ハーマイオニーは振り返った。
「マルフォイ…」
そこにいたのは漆黒のコートに身を包んだドラコ。
彼のシルバーブロンドは、白い雪の世界でもよく映えている。
ハーマイオニーは反射的に眉をひそめた。
「珍しい、って何が?」
「独りでいること」
「あぁ……色々あるの。貴方には関係ないわ」
「ふぅん」
それだけで何も言わないドラコに、ハーマイオニーはくぃと首を傾げる。
「貴方こそ珍しい」
「独りでいることか?」
「それもあるけど……口数が少ないわ」
「まぁな、色々あるんだ」
ドラコは俯いて微かに笑う。
「………」
少しの沈黙の後。
ハーマイオニーはくるりと方向転換して、橋へと足を進めた。
欄干に手をかけて、遥か下方を流れる川を追いかける。
キシリ、と小さな音がした。
「…変な感じ」
「何がだ?」
「いつもイラッとするのよ。人を見下したような貴方の笑顔」
「あぁそう」
「でも今日は違う。…そういう顔、出来るとは思わなかった」
「酷い言われようだな。普通に笑う時だってある」
今度はクスリと笑う。
「滅多に見せないけどな」
そう言ってドラコも橋へ歩き出した。
ハーマイオニーが足音に気付いて顔だけで振り向く。
「じゃあ余計に変だわ」
キシリ、という音はドラコの足音にかき消された。
「どうしてそんな顔、マグル生まれの私に見せてくれるのかしら?」
「…それは」
ドラコがためらいがちに言葉を落とし、顔を上げたその時だった。
バリバリッという木の裂ける音。
ドラコの足が止まる。
まるで誰かが時を操る魔法をかけたように。
彼の目の前で、ゆっくりと、ハーマイオニーの身体が傾く。
彼女の身体が、前のめりに倒れていく。
ドラコはそこで状況を理解した。
ハーマイオニーの驚いた顔が橋の下へ消えていく。
次の瞬間。
「つっ……」
「マルフォイ…!」
ハーマイオニーが「落ちる」と覚悟した身体は、
ドラコの右手に繋がれて、橋の僅か下で揺れていた。
遥か下を勢いよく流れる水の音が聴こえる。
ふと視界を巡らすと、思ったより遠くに川が見えた。
「や…どうしよ…」
「バカ…下を見るな…!」
「でもっ」
「平気だから!…絶対に離すなよ」
どうやら手袋が滑るらしく、ドラコはハーマイオニーの手を掴むのに必死になっていた。
「…あ、杖!」
ハーマイオニーが唐突に思い出して、ポケットを探る。
彼女の身体が大きく揺れた。
「おい、動くな!たぶん、落ちた…っ」
「ウソ!……じゃあ貴方のは?」
「こっちの方が、早い…!」
ドラコはそう言うと、片方の手袋を外して腕を引っ張る。
ハーマイオニーの腰に手を回すと一気に引き上げた。
「「…っ!」」
雪の積もった橋の上に二人で倒れこむ。
「っ…はぁっ…」
息を整えること数秒。
ドラコの上に乗っていたハーマイオニーが慌てて起き上がった。
「あっ、ごめんなさい!」
「いや…」
ドラコは立ち上がってコートに付いた雪をはらう。
ハーマイオニーはそんな彼を見ながらぽつりと言った。
「ね、マルフォイ…」
「何だ」
「あの…」
「何だよ」
「…ありがとう」
「……別に」
ドラコはもう片方の手袋を外しながら、何気なく言った。
「うん…」
ハーマイオニーはふぃと俯く。
ドラコはついさっきまでハーマイオニーを支えていた欄干に手をかけた。
今はその根元がすっかり折れて、大きく外に傾いていた。
「木が腐ってたみたいだな」
ドラコが欄干を少し揺らすと、今度はギシギシと大きな音がした。
「や、危なっ…」
「音がしたような気がしたんだ」
ドラコが川に視線を落として呟いた。
「もっと早く…」
「え?」
小さな言葉が拾えなくて、ハーマイオニーは思わず訊き返す。
するとドラコはハーマイオニーの方を向いて、
「こんな面倒なことはもうごめんだ」
ニヤリと笑った。
「じゃあな。…もう時間切れだ」
手袋をふいと振り、すれ違う。
ハーマイオニーの脇を、ふわりと風が吹いた。
いつも見ていたいやな笑顔だったはずなのに、
ハーマイオニーの心には何か引っ掛かりがあって。
「マルフォイ!」
振り返って呼びかけた。
ドラコはその場で立ち止まる。
「あの、ひとつ訊きたいんだけど…」
「……」
「…どうして助けてくれたの?」
「……」
「ね、マルフォイ…?」
「……」
もう一度声をかけようとしたその時。
「気の迷いだ」
ハーマイオニーに背を向けたまま。
たった一言。
それだけ言うと、ドラコは早足で賑やかな町並みへと続く道を歩いていった。
ハーマイオニーだけが、独りぽつんと、取り残される。
「何よ、それ…」
漆黒の後ろ姿を見つめながら、
「じゃあ何で笑ってくれたの…?」
ぽつりと、小さく呟いた。
**********
(どうして助けたのか、なんて)
「答えられるわけ、ないだろう…」
わからなかった。
なぜ彼女を助けようとしたのか。
わからないけれどあの時。
それまで押し込めていたのもが一気に溢れだしたように、身体が動いた。
思考とは無関係に、そして気付けば手を取っていた。
賑やかさを避けた裏道で、ドラコははたと立ち止まる。
さっき降りだした雪が、ドラコの肩に積もっていく。
ふと、ひとつの答えが頭を霞めた。
それはぼんやりと、しかしかなりの圧力でドラコの心にのしかかる。
認めるわけには、いかない。
わかっている。
だけど。
もう気付いてしまったから。
きっと、止められない。
「…くそッ」
手袋を地面に投げ捨てて、その場に膝をついた。
「なんでだよ…」
すっかり冷たくなった手で顔を覆う。
次に静かに紡ぎだされた言葉は、
白い息と一緒になって雪の中へ溶けていった。
「好きなんだ……」
***Fin.***
Brian Littrell「Angels and Heroes」がモデル。
…よくよく考えると、ずいぶんハーがドラコに優しいですが、
彼女の方もドラコをちょっと意識している…という設定でお願いします笑。
加筆修正あり。
…やっぱりドラコはナルちゃんと被るなぁ。漆黒被り。くふ。
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