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思うがままにつづったこころの中。その2 + あらゆるジャンルの二次Novel。まずはお知らせをチェック!
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 君とここに二人で来るのは去年のクリスマス以来。あれから半年季節が進んだ今は、夜の風も心地いいくらいになっていた。もうマフラーを二人で分けあうことも、ローブで囲って君を温めることも、必要ない。僕らは二人で中庭に置かれたベンチに座り、月の光は半年前と同じように僕らに降り注いでいた。
 ここは二人の思い出の場所だから、君が少し緊張しているだろうこともわかった。見えなくてもそんな気がした。きっと君は聡いから、僕がこの1年やってきたことも、そしてこれから何をするつもりなのかも、なんとなく分かっているのだろう。
 僕ははぁっと一つ溜め息をつくと、漸く口を開いた。
「ハーマイオニー」
告げた名前は決して白く溶けることはなく、ただ夏の夜空に響いていく。
「僕はもう…」
君が隣でぴくっと肩を揺らしたが、それには気付かないふりをした。固より、君の声を聞く気はなかった。口を挟まれる前に、一気に言ってしまわないと意味がなかった。
「ここには戻らない。どう抗っても無理だったみたいだ。だからもう君とは会…」
「ドラコ」
小さく響いた君の声に遮られて、僕はひゅっと息を呑んだ。君の手が僕の口に伸びてきて、もうこれ以上何も言えないようにと指を立てる。
「会わないなんて言わないで」
 その手が優しく頬をすべる。
「貴方は、独りじゃないわ」
 ふわりと微笑みを落とした君の声は、それでも少し震えていた。そうしてそのまますぅっと身を乗り出すと、小さなキスを落とした。ほんの一瞬ふれただけなのに、そこから温かさが伝わってきて、僕は知らず詰めていた息を吐いた。
「……こんなのは僕の望んだことじゃないんだ」
「うん」
「絶対にヤツの言い成りにはならないって」
「わかってる」
「でも……まさか母上を人質に取られるなんて思わなかった」
「…そうだったの」
言うつもりのなかったことまで零していた。ぽつりぽつりと吐きだす僕の言葉に、君はただ相槌を打つだけだった。
「君と僕の繋がりが分かれば、ヤツらの標的に君も加わる」
「そうね……でも自分の身は自分で守るわ。私は逃げ回るお姫様じゃないの」
 ハリーの傍にいたらどっちにしろ同じよ、と笑って付け加える。僕はその名前に少し顔を歪ませたけれど、君はまるで気付かない。
「会わないなんて言われる方がよっぽど苦しいわ」
 その声はあまりに切ない。それに…という君の声と共にぎゅっと抱きしめられた。
「貴方は私が絶対に助け出す。独りじゃないわ、ドラコ」
「それじゃまるで僕がお姫様だな」
小さく笑って、閉じ込めるように君の背に手を回した。その温もりを刻み込むように強く目を瞑る。二度も奏でられた君の言葉に、瞼の裏が熱くなるのがわかった。
 
 明日目覚めたときに僕がいないと知ったら、君は泣き叫ぶだろうか。きっと何一つ知らないフリであの二人に笑いかけ、一人きりの部屋で泣くのだろう。
 ハーマイオニー。
 僕は君に助けられるために行くんじゃない。君を助けるために行くよ。
 
 最後にどうしても言えなかった想いを―――
 
 

ごめん/君にりたかったこと

(―――どうか許して)

 

******

5年生設定ドラハ。ちょいと捏造。出来るだけ短い作品を作りたかったのです。
どんな話にするか全く決めてなかったのですが、結果的に悲恋になってしまいましたーごめんなさい。
ハー子たちの戦いを少しでも楽にするためにドラコは行くのです。それを言えなくてごめんね、って。
あと個人的に、ドラコにはナルシッサを大事にしてほしいです。
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