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ふいに思ったのだけど
僕ら二人は、似たもの同士なのかもしれない
思ってみれば互いに純血
私の心に沁み付いた不安がある。
それは幸せを感じた瞬間に襲いかかり、私の心を深く突き落とす。
そう、
丁度今のような。
愛しい貴方に抱きすくめられた瞬間に。
「…どうした?」
貴方は訊く。
会って数分しか経っていないのに。
まだ一言も発していないのに。
「別に? どうもしないわ」
笑顔を作って、ちょっと上目遣いで言ってみる。
いつものように。
…それなのに。
「嘘をつくな」
貴方は静かな声で言う。
私はその眼差しに耐え切れなくて、もう一度貴方の胸に顔を埋める。
「…何があった?」
どうしてそんなに聡いのかしら。
貴方には言わないって決めたから黙っているのに。
何でも見透かされているようで…
悔しい。
「何も…ないわ」
何故だか涙声になった。
それじゃあ何かあると言っているようなもので。
そんな私の反応に貴方がふっと笑う。
顔は見えないけれど、何となくそんな気がした。
「……そうか」
私の頭に微かな重みを感じたと思ったら、貴方の大きな手で撫でられた。
その温もりが心地よくて、幸せ、と思う。
でもそれと同時にまた。
不安に襲われる。
「私じゃ…合わないの」
あぁ。
「ドラコには合わないの…」
貴方の掌から伝わる優しさに。
私の決心は簡単に崩れてしまったみたい。
「…何だそれ」
突然の告白に一瞬止まった貴方の手は、また一定のリズムで動き始める。
「何で今更そんな事を?」
「だって…っ」
「マグル生まれだから、とか言うなよ? その話ならもう気にしないと言った」
「っ…」
ほらね。
それを真っ先に言おうと思っていたのに。
やっぱり見透かされている。
「でもそれだけじゃないわ…っ」
遂に涙が溢れ出した。
悲しいのか悔しいのかわからない。
だけどとにかく、貴方を納得させるような理由が欲しかった。
「そもそもグリフィンドールだし」
「うん」
「お嬢様でもないし」
「うん」
「それに…キレイじゃないし…っ」
「……ふぅん」
必死な私とは対照的に、貴方はとても落ち着いていて。
そういう貴方の全てが理由なのよ、なんて言いたくなるけれど。
それを何とか飲み込んだ代わりに。
「どうしてドラコを選んだのよ…」
一番言わないように気をつけていた事を零してしまったみたい。
「それだけは言うなよ」
また笑ってる。
どうせバカにしてるんでしょう?
そう思ったのに。
「そうだな……僕がハーマイオニーを選んだのは」
トクン、と胸が音を立てた。
急に貴方の声のトーンが変わって、至極真面目になったから。
「きっと、…僕に似ていたからだろうな」
また、トクン、と。
今度は驚きの音。
「似てる…?」
何を言い出すの、貴方は。
「そう。まずお前が気にしているマグル生まれだけど…
考えようによってはお前も純血だろうう? マグルの純血」
「え…」
貴方らしからぬ発想に言葉を返せない。
私が驚いてつい顔を上げてしまうと、貴方はくすりと笑う。
「今、僕らしくない、って思っただろう」
…また読まれてしまった。
ついでに貴方の笑顔に固まって。
ドキドキを誤魔化すように思わず私は言葉を続けた。
「だ、大体ね! ドラコは鋭すぎるの。私の考えなんてすぐにわかっちゃう」
顔が赤くなるのがわかる。
早くこの視線から逃れなければ、とひたすら焦る。
それなのに貴方は私の涙を指で拭って、
「それは当たり前。好きだから」
また赤くなるような台詞をさらりと言う。
「それにハーマイオニーも十分鋭いと思うけど?
わざわざ言葉にしなくても僕の気持ちをわかってくれるだろう」
「…嘘言わないでよ」
赤い顔を隠すように俯いてそう言うと、貴方はぽんと私の頭に手を置いた。
「本当だって。少なくともパーキンソンと居るよりは心地良いな」
「なっ、少なくともって何よ! しかもあんなのと比べないで頂戴!」
つい反論してしまうと、そんな私の頬に指を添えて、
「そうそう、あとはそんな負けず嫌いなところも」
貴方は面白そうに笑った。
「何も言わずに僕の隣に居られるのはハーマイオニーくらいしかいない。
…というか、そもそもそんなヤツじゃなければ僕の隣には置かない。わかったか?」
私が小さく頷くと貴方は満足したようで、またギュッと抱き締めてくれた。
その心地良さを私が気に入っていることまで、貴方はわかっていたみたいね。
結局貴方のペースに乗せられてしまったようで。
はっきりした答えなんてくれなかったのに、貴方の隣に居てもいいのね、って安心した。
実は私たち似てるのかも、なんて思ったりして。
あぁ。
でも最後に耳元で囁いた言葉には呆れてしまったけれど。
「それに僕ら、かなりの美男美女カップルだと思わないか?」
…貴方のそのナルシストっぷり。
それだけは絶対に似てないわ。
***Fin.***
最後の一言は大したことないけど…なんだか急に恥ずかしくなったので消してしまいました。
ドラコとハー子は似た者同士なのかな、とふと思って、お題をテーマに書いたもの。
二人の立場が本当は逆だろうって…わかってるけど。
今読むと、ドラコさんがナルに見えてしかたない件について←
若干の修正あり。