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思うがままにつづったこころの中。その2 + あらゆるジャンルの二次Novel。まずはお知らせをチェック!
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Chaper 1 -1


 林の中を一台の車が抜ける。決して荒くはないがそこそこのスピードで、かろうじて道になっているようなところを進んでいく。辺りの空気が湿ってきて、今にも雨が降りそうな空模様だった。車は少し開けたところまで来るとゆっくり路肩に止まった。
 ハザードを点けた車の運転席から男が一人降りてくる。漆黒の髪を少し長めに伸ばし、お洒落なジャケットをスラリと着こなした彼は、もしここが都会の街中ならすれ違う人がみな振り返るだろう、人を引き寄せる空気を醸し出していた。
 続けて女が助手席から現れた。漆黒の髪を、こちらは腰に届くほど伸ばしている。小走りで車の前を回りこんで彼の隣へ移動した。サラサラとなびく髪がその後ろを追いかける。
「お前、ちゃんと地図見てたのかよ…」
「みっ、見てたさ! しょーがねぇだろ、途中から地図に道がなくなっちまったんだから…」
「ならそん時にそう言えよ」
「うっ……」
女らしい風貌とは裏腹に彼女の言葉遣いは荒っぽかった。必死で言い訳をする彼女に彼はふぅ、と息を吐く。湿った風が二人の間を強く抜けた。
「まあ、今さら言ってもしょうがねぇか」
「…悪かったよ」
「気にすんな。それよりどうする? 雨も降りそうだし…とりあえず標識か何か場所が分かるところまで走ってみるか」
 男は女の頭を軽くぽん、と叩くと運転席のドアを開けた。女はまだバツの悪い顔をしていたが、彼の動きを見て自分も助手席に乗ろうと車の前方に顔を向けた。すると、何か見つけたのだろうか。もともと大きな瞳がさらに驚きで見開かれ、その手は乗り込もうとしていた男のジャケットを掴んだ。
「…ちょっと、慎! あそこ」
「なんだよ……あ」
慎、と呼ばれた男は屈めていた身を上げると女の指差した方へ顔を向けた。さっき車から降りた時は角度が悪くて見えなかったが、木の影の向こう、山頂にほど近いところに一件の洋館が見えた。
「誰かいるかもしれないって? でもこんな山ん中だから、もう空き家で無駄足じゃねえか?」
「でもこのまま当てもなく行って雨に降られるよりいいだろ? な?」
行こう行こう、とジャケットの裾を引っ張る彼女はどこか楽しそうだ。慎の帰国記念にと二人で初めて旅行にきたのだが、このちょっとしたハプニングを目の前の女は楽しんでいるようだった。慎はもう一度溜息をつく。
「わかったよ、行けばいいんだろ?」
「わかればよし!」
彼女は2年前まで生徒だった彼にするように頭をガシガシ撫でる。やめろよ、と言いながら慎はその手から逃れて運転席へ体を収めた。窓を開けて顔を出すと、まだ運転席の外で嬉しそうに笑っている彼女に声をかけた。
「おい、そんなとこに突っ立ってると置いてくぞ、久美子」
「わ、待て待て!今乗るから」
久美子は慌てて助手席へ回り込み、彼女が乗ったのを確認すると慎は車を発進させた。
エンジン音を響かせて走る二人の車が木陰に入って見えなくなったころ、ぽつぽつと降り出した雨が茶色の地面を濡らしていった。



***to be continued...***


長編第1章。
今回は慎クミ山の中の巻(違)
ヤンクミのちょっと子供っぽいところと、慎のそれを見守る空気が好き。
でも正直このお話にいると邪魔なのですね。要するにただの素人なので。
ヤンクミは不良相手ならもってこいだけど幽霊は大の苦手だと思われ。
慎ちゃんには頑張ってほしいところなのですが、これがそうもいかない予感です。

長編書くのに不慣れなので、お先真っ暗ですが頑張ります(ぇ。
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