思うがままにつづったこころの中。その2
+
あらゆるジャンルの二次Novel。まずはお知らせをチェック!
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
言葉と想いはウラハラ
許してくれなくたっていい--------
The opposite
「……別れよう」
無理矢理絞り出した声は、静寂に満ちた部屋の中でいやに無機質に響く。
月明かり差し込む教室にいるのは、僕とハーマイオニーだけ。
僕が彼女を呼び出して、僕から話を切り出した。
彼女は僕のローブを握り締めたまま、顔を上げない。
泣いている。
それくらい、わかっている。
それでも告げなくてはならない。
彼女のためだから。
「…っ、嫌…」
彼女は震える声で言った。
「……私のせいなんでしょう?私がマグル生まれだから、またお父様に…」
「そんなんじゃない」
「じゃあ……どうして…」
瞑目する。
ひとつ大きく息をした。
僕は彼女に非情な言葉を落とす。
「……嫌いになったからだ」
その一言で彼女は顔を上げた。
ほら、思った通り。
綺麗な瞳に涙を溜めて。
一瞬驚いたそれはやがて細められ、吐き出されたのはたった一言。
「嘘つきっ…」
僕の目を離さない。
その目で必死に訴えてくる。
僕の口から出る否定の言葉を待っている。
でも彼女の望む答えは返せない。
「嘘じゃない」
「何で……?わからない、ちゃんと説明してよ」
思わず目を逸らしてしまった。
僕も泣きそうになる。
でも、だめだ。
涙を見せるわけにはいかない。
涙を堪えていつもの「マルフォイ」に戻る。
それで、いい。
放たれた言葉は思ったより冷たく響いて安心した。
「物分かりの悪いやつだな。お前みたいなマグル生まれといると疲れるんだよ」
「ドラコ……?」
「やっぱりマグルとこの僕じゃ釣り合わないんだ。当たり前の話だけどな。
お前と付き合うなんて、本当に僕はどうかしていたよ。全く……もっと早く気が付いていればよかったな」
驚くほどスムーズに言葉が流れ出す。
まるで初めから心の奥底でくすぶっていた思いのように。
「何言ってるの……貴方、言ったじゃない。私の生まれは関係ないって。ずっと一緒にいてくれるって…」
「そんなこと本気で信じていたのか?まぁ、魔が差したってトコだ。僕としたことが…」
今まで「好きだ」とか「綺麗だ」とか当たり前の言葉はなかなか言えなかったのに、
彼女を傷付ける言葉は幾らでも溢れてくる。
『誰か止めてくれ』
そうも願ったが、この会話を止めたらすぐに彼女を抱いてしまいそうなのも事実だった。
「もうお前と一緒にいるのはうんざりなんだよ」
本当の理由は、言えない。
彼女は気付いていた。
だから、言わない。
初めから見えていた終りだった。
初めから二人を隔てる壁があった。
僕と彼女。
スリザリンとグリフィンドール。
魔法族とマグル。
そして、純血と穢れた血。
壁を越えようと必死になっていた僕らは気付かなかった。
二人を引き摺り下ろそうと、闇の手が伸ばされていたことに。
でも、そんな理由を彼女は知らなくていい。
もう一緒にはいられない。
「いつかまた…」
そんな希望を抱かせない。
彼女はそうやって苦しむ必要なんてないのだから。
僕が最後に彼女に出来ることはただひとつ。
僕を、憎め。
最後の最後に君を捨てた僕を、憎め。
そしてその心から、恋人であった僕の存在を、消してくれ。
「それが全てだ。さぁ、いい加減その汚い手を放してくれないか」
そう言い放つと、ローブを握っていた手はゆっくりと力を失った。
僕と彼女の繋がりは、今、切れた。
涙を堪えるのはもう限界だ。
サッとローブを翻し、教室を大股に横切ってドアへと向かう。
彼女の顔は、見なかった。
なのに。
「…ドラコ」
未練がましいヤツだと思う。
「名前で呼ぶな」
その愛しい声に、
「この穢れた」
思わず振り返ってしまった。
「血………っっ」
彼女と視線が絡む。
言葉に詰る。
予想外の彼女の行動に囚われて、動けなくなった。
彼女は笑っていた。
その目に涙を溜めていたが、必死で笑っていた。
今度は彼女が先に目を逸らして僕の方に向かってくる。
「全くもう……最初から最後まで紳士なのね」
「何のこと…」
「覚えてる?貴方に告白されたとき。あの時も貴方は紳士だった。
あまりに優しくて嫌味ひとつ言えなかったのよ?悔しかったんだから」
彼女は僕の手を握り、自分の頬に押し当てた。
「ドラコは優しいから……全部一人で背負い込むでしょう?…ごめんね、苦しませて」
そして僕の目を見て言う。
「今度生まれ変わるときには、絶対に貴方だけを苦しませないわ。堂々と貴方を愛せるように生まれてくるから…」
僕の手にひとつキスを落とすと、
「さよなら、ドラコ」
早足で教室を出て行った。
足音が消えていく。
僕の一番大切な存在が消えていく。
僕を支えてくれた人がいなくなって、同時に僕の足も自身を支えることを止めてしまった。
ぺたりと床に座り込む。
彼女のために--------そう思って出した決断だったのに、僕が考えるよりずっと、彼女は強かった。
フリをしていただけかもしれない。
それでも、彼女は全てわかっていた。
全てを理解した上で、僕の決断を受け入れてくれたのだ。
弱いのは自分の方だった。
「ごめん、ハーマイオニー……本当にごめん」
涙が溢れ出した。
彼女にはもう会えない。
最後に右手に感じたぬくもりだけが、はっきりと残っていた。
***fin***
前ドラハサイトでいちばん好きだった作品。
……えぇ、そうなんです、別れネタなんですよ。
でも好き。
好きなのに別れざるを得ない二人の気持ちが。
ドラハならではだなぁって思います。
PR
この記事にコメントする