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「……何よ?」
 視線を感じて、ハーマイオニーは読んでいた本のページをめくる手を止めた。右隣を見上げると、視線の先にはほんの少しの驚愕を秘めたアイスブルーの瞳。ハーマイオニーの茶色の瞳とかち合ったそれは、ふるると揺れて視線を逸らした。
「いや……」
 何でもない、というふうに答えるドラコに、気付かれたかな、とハーマイオニーの胸が跳ねる。少し早くなるそれがばれないように、ハーマイオニーは声を落とし、本に視線を戻した。
「…嘘よ、貴方さっきから見てたじゃない」
「……」
「何なのよ。おかげで集中でき…」
「ハーマイオニー」
 文句の言葉を遮ってドラコがハーマイオニーの名前を呼んだ。その強い声にハーマイオニーの肩がピクリと揺れる。同時にすっと白い指が頬へ伸びてきて、俯くハーマイオニーの顔を無理矢理自分の方に向けさせた。
「な、何っ…」
 もう一度かち合ったアイスブルーの瞳から逃れたかったのに、頬に添えられた彼の手がそれを許さない。さっき自分は逃げたくせにずるい、とその瞳を睨む。
 でも次に聞こえた声にハーマイオニーはぽっと頬を染めた。
「お前もしかして、化粧してる…か?」
 わかりやすすぎる彼女の反応に、ドラコは口元を綻ばせた。
「やっぱり……」
「ち、違うの!」
 ドラコの反応に何を思ったのか、ハーマイオニーは必死で否定する。恥ずかしさからその目には零れそうな涙が溜まっていく。
「ラベンダーたちに無理矢理させられて……私はいやだって言ったのよ? でもやっぱり断るべきだったわ!どうせ似合ってな…」
「綺麗だ」
「え……」
「すごく、綺麗だ」
 ドラコがふわりと笑った。その姿にハーマイオニーは思わず見とれてしまう。
「…っ」
「何?」
「やっ…だって急にそんなこと言うから」
 ハーマイオニーの瞳から零れた涙をドラコの指がぬぐう。そのまますっと顔を寄せると、濡れた瞼にキスを落とした。
「本当のことだ」
 目元に落とされたドラコの言葉に、ハーマイオニーは睫毛を震わせる。そんな彼女の反応を見たドラコは、何かを思いついたようにニヤリと笑った。不幸なことに、それはハーマイオニーの視界には入らない。
「あぁ、でもせっかく綺麗にしてもらって悪いが…」
 ドラコはグロスが薄くのった唇にすっと指を這わせると、
「落ちてしまうな」
「…っ!」
とっさに身を引いたハーマイオニーの頭を引き寄せて、口付けた。
 
 
 

いつもと違うきみだったから

(ただし僕の前だけにしろ)



******

ヤマなしオチなしごめんなさい。
かなり前に、もっと長いお話の一部になる予定で書いたドラハ。
色々面倒だったのでこの場面だけ切りとってしまいました。
甘いドラハ!珍しいね!
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