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思うがままにつづったこころの中。その2 + あらゆるジャンルの二次Novel。まずはお知らせをチェック!
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     Ferret’s Tail -6-


 ハーマイオニーがさっと立ちあがって辺りを見回した。ふと頭に浮かんだのは白いふわふわの毛並みに包まれてくりっと自分を見つめる青い目。
「……いるの?」
 囁いたはずの声は漆黒の闇の中でいやに響く。かさり、という音がさらにして、ハーマイオニーは今度はその場所を探り当てた。グリフィンドール塔へ戻る道とは反対側、細く折れた道の角に、見なれた白い尻尾が立っていた。ハーマイオニーはその後ろ姿にゆっくりと近づいていく。さくっ、と雪を踏み分ける音がした。
 その瞬間、白い尻尾がぴくりと翻り、雪を被った草むらに隠れて見えなくなった。しかしどうやら厚く積もりだした雪が邪魔して早く走れないらしい。足音はそう遠くまで言っていないようだった。
「待って!」
 思わず大声を出したハーマイオニーの声が聞こえてか、雪を踏みしめる小さな音が止まる。恐る恐る近づいていくと、雪の影に隠れてあの白イタチがうずくまっていた。自分の毛並みを気にするようなそぶりを見せ、背を向けている。しかしハーマイオニーがそっと手を伸ばして抱き上げると大人しく従った。
「あなた、随分冷たくなっちゃってるわ。どれくらいここに…………!」
 冷えた白イタチの体を両手で包んで温めながら、ハーマイオニーの頭に一つの可能性がよぎった。大人しく自分の手に収まる生き物を見下ろして、震えた声で訊ねる。
「もしかして……聞いてた?」
 ぴくん、と耳が動いたが、それ以外は特に何の反応も示さない。ハーマイオニーにとってはそれが答えだった。意地っ張りで天の邪鬼な彼はこういうふうにしか気持ちを表してくれない。こんな些細な反応でもそれがすべてだった。
「そう……気付かなくてごめんなさい」
 もちろん何の反応も返さず毛並みを整え続けている白イタチだったが、ハーマイオニーはその頭を軽く撫でて構わず続けた。
「私、たぶんロンのことが好きなの。……いえ、たぶんじゃないわ。絶対、よ」
 今まで何度もそうしてきたように白いふわふわな毛を撫でていると、心の奥に埋まっていた想いが解けだしていくようだった。読んだ本の内容を話して聞かせているかのように、穏やかな声で、何かを思い出すように言葉を紡ぐ。
「あの大家族の末っ子っぽいわがままなところとか、勉強はすぐ私に頼ってくるところとか、目を離すと何を仕出かすかわからないところとか、本当に困るのよね。でもクィディッチを見てる時、やってる時の楽しそうな顔、時々びっくりするくらい勇敢なところ、もう一緒にいすぎて当たり前になっちゃったけど、やっぱりドキドキするんだもの。だから、やっとだわ、って思ったの。ゆっくり考えてくれて構わない、なんて言ってたけど、彼に返す答えなんてとっくに決まってたのよ。なのに……」
 背中を撫でるリズムが止まって、白イタチは顔を上げた。ハーマイオニーがはぁっとため息を落として俯く。
「何も言えなかった……」
 青い瞳が見上げた先には少し潤んだ茶色の瞳がある。今夜初めて、二人の視線が繋がった。
「真剣な声で黙れって言われて、急にキスされて、なんだか怖くなっちゃったの。今まで私が見てきた彼じゃないみたいで。……私、バカみたいね。ずっと一緒にいて、ロンのこと知ってるつもりでいて、いざとなったら怖くなった、なんて」
 ハーマイオニーの声が震える。今まで大人しく彼女の手の中で丸まっていた白イタチがもぞもぞと動き出したかと思うと、腕を伝って肩まで上ってきた。
「…? どうしたの?」
 顔をそちらに向けようとするハーマイオニーの頬を白イタチがぺろりと舐めた。驚いて頬に手をやって初めて、ハーマイオニーは自分が涙を流していることに気がついた。白イタチはその涙を拭うように舌を走らせている。ハーマイオニーはくずぐったさに少し笑いをこぼし、もう片方の頬を自分の手で拭うと、肩に乗った白イタチをその手に包んで顔の前まで持ち上げた。
「あなたもしかして、慰めてくれてる?」
 キュウ、と短く鳴く。どうやらそれが答えのようだった。
「ありがとう。あなたを目の前にすると気持ちがすっきりするわね。心の中の自分でわからなかった想いを整理出来たみたい。もう少し、ゆっくり考えてみることにするわ」
 白イタチはくりくりした青い目でじっとハーマイオニーを見つめている。ハーマイオニーはくすりと笑って彼を雪の積もっていない、城の入口に下ろす。
「さ、もう寒いから帰りなさい。私は場所を知らないから連れて行けないし……それに地下室は寒いからイヤ」
 その言葉にぴくりと反応した白イタチはハーマイオニーの手の甲に鼻先を一瞬押し当てて城の中へと消えていった。ハーマイオニーはきょとんとしてその後ろ姿を見つめる。少し濡れた感触の残る手の甲をもう片方で覆い、もう一度くすりと笑いをこぼした。
「まったく……紳士の気質は備わってるのね」
 そうして城の中の白イタチとは反対側、グリフィンドールの寮へ向かって足を速めていった。



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***
ロンのことを切々と語るハーちゃんは書いてる方が恥ずかしくなった…。
イタチちゃんは切ないっすね。
それでも涙をぬぐってあげるところ、
手の甲にちゅーするところ(あれはちゅーなのよ!笑)、
どこまでも彼の中に優しさというものを残したかったのです。

…ヤマなしオチなし。もうそろそろ終わります(ぇ)
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     Ferret’s Tail -5-


 しかし奇妙な一人と一匹の時間はそれからなかなか訪れなかった。その一番の原因はハーマイオニーが忙しさに追われて中庭で読書をする時間を取れなかったからだ。ハリーはヴォルデモートの力が強まっていると訴え、またその頭の中に入り込んで誰かを探し彷徨う光景を見たと告げた。ロンと二人であれこれ仮説を立てるハリーに「心を閉じなさい!」と何度怒鳴ったことだろうか。彼らと議論している時間の方が一人で過ごす時間より確実に長くなっていった。ハーマイオニーもはじめのうちは白イタチのことを気にしていたが、だんだんそんな余裕もなくなっていった。
 そんな風に忙しい日々に追われていた頃、ハーマイオニーは久しぶりに中庭へ足を踏み入れたのだった。
「春ももうすぐかしら」
 ふと、城と中庭の境に咲くスノードロップに目を落とす。すぅっと手を伸ばしてその元を手折ると、杖を出して魔法を唱えた。一瞬スノードロップの周りに雪の結晶のような細かく輝くものが舞ったが、花そのものに大きな変化は見られない。
「何の魔法をかけたのさ?」
 唐突に背後からかけられた声にさっと振り向く。そこにいたのはいつの間にか見上げなければ目を合わせられないくらい成長した大切な親友の一人だった。
「あら、ロン。どうしたの? さっきハリーと暖炉の前で話し込んでたじゃない」
「そうなんだけど……」
 赤毛の少年はその髪をかきながら答えた。
「ハーマイオニーがどこ行ったのかと思って」
 頬が心なしか染まっている。ハーマイオニーはきょとんとしてその顔を見つめた。それじゃあロンが自分のことを気にかけてくれたと言っているようなものじゃないか。こんな時に働かない頭をフル回転させようとした……が。
「ちょっと座ろう」
 急にハーマイオニーは手を引かれて、一番近くにあるベンチまで連れていかれた。されるがままにロンの隣に腰を落とす。
「あ、あの…ロン…」
「で、さっきのは何?」
「え?」
「だからさっきその花にかけた魔法。見た感じ何も変わってないみたいだけど」
 何も気にしていないようにいつもの調子で問いかけるロンに、ハーマイオニーは戸惑いながら答えた。
「え、えぇ、これね……時間を止める魔法よ」
「え? でも言ってたじゃないか。魔法使いでも時の流れを変えることはできないって」
「正確にはちょっと凍らせただけ。プリザーブドフラワーみたいなものかしら」
「プリザーブドフラワー? 何だよ、それ」
 ロンは眉間にしわを寄せて、初めて耳にしたらしい言葉を言いにくそうに発音した。いつも通りの会話の流れに乗って、ハーマイオニーもいつものように流暢に答え始める。
「あら、マグルだけのやり方なのかしら? 切り花をより長い間もたせる方法よ」
「へぇ。俺んちではだいたい魔法薬で済ませるなぁ。それ、どうやるの? 今度教えてよ。母さんがいつも俺に世話を任せるから苦労してたんだ」
「そうね、きっとおばさまなら喜んでくれうと思うわ」
 ハーマイオニーがくすりと笑う。それを見てロンも嬉しそうに顔をほころばせた。
 2月の冷たい風に乗って白が舞う。
 ハーマイオニーが漆黒の空に向かって指をさし、つられてロンが顔を上げた。
「今年最後の雪かもしれないわ」
「そうかもな。それ、もしかしてそういう花?」
 ロンがハーマイオニーの手に握られた白い花を指差す。
「えぇ。この花が咲くと春が近い証なんですって」
「ふぅん。……でも、まだ寒いから春は当分来ないんじゃない?」
 ロンのその言葉にハーマイオニーははっとして慌ててローブから杖を取り出した。
「寒い?」
「……ちょっと?」
「気付かなくてごめんなさい! 今火を作るから待って……」
「いいよ、これで」
 ハーマイオニーの体がぽすんと倒れる。肩にロンの大きな手が回され、火を出そうとして上げた杖は振られずに膝の上に落とされた。
「ロン……?」
「いいだろ。これでも十分あったかいんだから」
「でも……」
ロンの空いた手が頬にスッと伸ばされて、ハーマイオニーはわずかに体を強張らせる。
「つめた……」
 そのまま大きな手で包み込むとハーマイオニーの顔を上げさせる。ロンの顔が近づいてきてハーマイオニーは焦り出した。
「ちょ、ちょっと」
「イヤ?」
「そんなんじゃ……」
「じゃあ黙って」
 親友だと思っていた彼の今まで聞いたことのない真剣な声に戸惑っていたら、軽いキスが落とされた。
「……っ」
 ハーマイオニーは真っ赤になってロンから顔を遠ざける。吐く息が震えていた。
 二人の間を風が走った。冷たいはずの風が、ちっとも冷たく感じない。
「もし本当に嫌だったなら謝る」
 背後からロンの声が聞こえた。
「でも……俺は本気だから」
 ハーマイオニーの体がぴくんと震えた。積り始めた雪を踏みしめる音が微かに聞こえて、ぽすんと温かい手が頭に置かれた。見上げるとロンが隣で空を見上げるように立っていた。
「本当はもっと色々考えてたんだけど……急にごめん」
 振り向いてハーマイオニーの目を捉えて続ける。
「別に今すぐどうしろとか言わないから。ゆっくり考えてもらって構わない」
 答えを返せないハーマイオニーの頭をもう一度軽くぽんと叩くと、「寒っ」と言いながらローブを丸めこんで城に戻っていった。
 ハーマイオニーはしばらくその後ろ姿に目を向ける。薄々そんな気はしていたし、自分でもそうなればいいと思っていた。でもいざ目の前にして言われるとまだ心が混乱していた。ロンの姿が見えなくなった城から目を離して、今度は空を見上げる。
「答えなんて、決まってるじゃない……」
 でもロンにすぐ答えを返せなかったのはなぜ。この心に渦巻いている霧は何なのか。そう考えてはぁ、っと大きなため息を落とす。それは白い霧となってすぐに消えてしまった。
 
 その時。しゃく、という微かな雪を踏み分ける音が聞こえた。



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***
 うわぁーロンハー!しかも あ ま す ぎ る ! !
ごめんねごめん、Mieはドラハー至上主義なんだよ。
でもストーリーの都合上どうしようもなかったんだ。
ていうか全体を通してロン→←ハー←ドラな空気が漂ってるんだ。
「Nora」の切なさが叶わぬ恋のドラ→ハーに重なっちゃったんだ…。
     Ferret’s Tail -4-


 翌日からハーマイオニーと白イタチの奇妙な日常が始まった。
 白イタチはハーマイオニーが中庭にいるときに表れるのだった。それも、決まって一人で本を読んでいるときに。
 
 その日は今年初めての雪が降ったのだが、ハーマイオニーは中庭でも屋根のあるところを見つけて本を読んでいた。膝の上にはいつかのマグルの童話についての分厚い本が置かれ、脇には彼女が得意とする持ち運び可能な火が透明なビンの中で淡いオレンジを放っていた。こんな寒い日なのにわざわざ外で読書をすると決めたのは、またあの白イタチが来るに違いない、という根拠のない自信があったからだった。彼に聞いておきたいことがあった。
 案の定、カサリ、という微かな草の音を聞いてハーマイオニーが本から顔を上げると、その足もとの草むらから雪と見紛うほど白いイタチの顔が覗いていた。
「あら、こんなに寒いのにまた来たのね?」
 ハーマイオニーが本を脇に置いて呼びかけると、白イタチは青い目でハーマイオニーを見つめた後、くるんと尻尾を向けた。しかし逃げようと思ったわけではないらしい。ハーマイオニーが手を伸ばすと大人しくその中に収まった。白イタチを膝の上に乗せ、ハーマイオニーは一度閉じた本を開く。
「ねぇ、聞いて? この記述、面白いのよ。『童話・美女と野獣における赤い花について、これにかけられた魔法は実際には不可能なものであり、マグルが魔法について抱く幻想をよく表している』ですって。私、子供のころからずっと願ってたのに残念だわ。こんな風に誰かの愛を表す花が私にも作れたらいいのに、って」
 白イタチが表れるようになってから、ハーマイオニーはよくこうして自分の読んでいる本の内容を話しかけていた。そういう時、白イタチはハーマイオニーの膝の上でじっとしていることが多かった。まるで文字を追っているかのように、頭を左右に動かしているのだ。はじめのうちはハーマイオニーも驚いていたのだが、だんだんそれが当たり前になり、白イタチは彼女の日常に溶け込んでいった。
 今日も一生懸命頭を揺らす白イタチに、ねぇ、と呼びかけると、それは本から顔を上げてくるりと上を向き、茶色の瞳を見つめた。そこで彼女は聞いておきたかったある疑問を投げかける。
「私がここで本を読んでるといつも表れるじゃない。あなた、中庭に住んでるの? それとももしかして……私を待ってたの?」
 白イタチは答える代わりにふいと目を逸らした。それがイエスと言っているようで、ハーマイオニーは思わず笑いを漏らす。
「そうなのね、ありがとう。こんなに寒かったのに待っててくれて」
 肌触りのよい白い毛並みを梳かしながら言うと、白イタチは長い尻尾をペタンと本の上に打ち付けた。こちらを向こうとはしない。照れてるの? と問いかけると、今度はくるっと勢いよくハーマイオニーの方を向いて、その青い目で彼女を睨んだ(ようにハーマイオニーには見えた)。
「意地っ張りで天の邪鬼なのね」
 クスッと笑う。あの夜から何度か繰り返されたこの「意地っ張り」のやり取りはハーマイオニーを楽しませていた。その反応はシルバーブロンドの彼を思い出させるものだったが、もしあの白イタチが彼だとしても構わなかった。それはいつも彼女を罵るその言葉がないからかもしれなかったし、素直に彼女の言うことに耳を傾けてくれることが嬉しかったからかもしれなかった。ハーマイオニーは手を止めずに呟いた。
「私、あなたになら何でも話せる気がしたの」
 それは事実だったが、意識して避けていた話題があった。それは彼女の一番大切な親友のことだった。それは彼女自身の「意地っ張り」のようなものだった。何か越えてはいけない線がそこにある気がして、ずっとその名前を口にできなかったのだった。ハリーやロンと共に様々な困難を乗り越えてきたハーマイオニーにとって、ただ平和に毎日が過ぎてくれればそれより嬉しいことはなかったし、自分の発した言葉で起こる無駄な争いは避けたかった。
「あなた、本当は……」
 言葉を切ったハーマイオニーに、本の上の彼が不審な目を向けた。
「いいえ、やっぱりやめておく」
 ハーマイオニーは無理やり笑う。白イタチはその笑顔に気付いたかどうかわからなかったが、自分の背を梳いていた手に身を寄せた。ハーマイオニーはそのふわふわを楽しむように目を閉じる。
 ……と、キュン、と小さな声が聞こえた。目を開けると白イタチがぷるぷるっと体を震わせている。ハーマイオニーはそれをキョトンと見つめたあと、はっと何かに気づいて肩を震わせた。笑いが込み上げてきたのだ。
「あなた、もしかして今、くしゃみした?」
 白イタチは特に彼女の顔を見ようともしないで丸くなる。
「そんなに綺麗な毛皮を着てるのに、やっぱりスコットランドの冬は寒いのね。ちょっと待って」
 ハーマイオニーは自分のマフラーの一方だけ長く伸ばすと、それを膝の上の白イタチに落とした。きつくなり過ぎないように、それでも寒い空気がなるべく入らないように気を付けて巻いていく。すぐにグリフィンドールの赤と金の中に映える白イタチが出来上がった。
「どう?これでちょっとは暖かくなった?」
 白イタチはマフラーに顔を埋めてしまい、ハーマイオニーの目に映るのはまさに白いふわふわな塊。それを優しく撫でるとぴくっと動いたが、どうやらもうそこから顔を見せる気はないようだった。
「仕方ないわね。私がこの本を読み終わるまで、こうしててあげるわ」
 ハーマイオニーはくすりと笑って白いふわふわを潰さないように注意して本を開き、美女と野獣についての考察にもう一度目を走らせた。



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***
いつも書きながら、自ら指定したイタチちゃんの動きに萌えてたりします笑。
だってくしゃみとか、マフラーに埋もれる白いふわふわとか…!
あ、あと本の記述は適当です(えへ)
でもどんな魔法をもってしても、人の愛をはかる方法なんてきっとない。
それこそ人が魔法や神に抱く幻想なのかもしれないな、なんて。
     Ferret’s Tail -3-


「どのくらい効くかわからないけれど……」
 ハーマイオニーは自分の部屋へ連れて帰った白イタチをベッドの上に乗せ、ローブの胸元から杖を取り出した。さっき暴れたせいで疲れ果てて小さく息をする体にそれを向ける。
「お願いだからじっとしててね。……Episkey」
 杖の先が仄かに白い光を放ち、白イタチの体がぶるぶるっと震えた。それきり動かない。
「ちょっと、大丈夫!?」
 ハーマイオニーは杖を置いてその白い毛並みにゆっくり手を伸ばす。その手が体に触れる直前、白イタチはぱっと飛び起きて青い目でハーマイオニーを仰いだ。ハーマイオニーはその目をきょとんと見つめて、はぁ、と息を吐いた。
「もう、びっくりさせないで。何か起こったかと思ったじゃない」
 胸を撫で下ろすハーマイオニーの目の前、彼女のベッドの上で白イタチは今まで弱っていたのが嘘のように歩き回っていた。枕元まで行ったかと思うとくるりと尻尾をくねらせて足元へ向かう。途中で毛布に足を取られてつんのめったが、すぐに何事もなかったように起き上がり、また歩き始める。ハーマイオニーは思わず吹き出してしまった。
「あなた、やっぱり似てるわね」
 ハーマイオニーが呟くと、白イタチはちょっと彼女に目を向けてからベッドの端へ移動した。どうやらそこから床へ飛び降りたかったようだが、さっき階段から転げ落ちた記憶が残っているらしい。少しためらう仕草を見せた。ハーマイオニーはくすりと笑って白イタチを抱きあげる。自分もベッドに腰を下ろすと、膝の上に白イタチを乗せてその背中にゆっくり手を滑らせた。
「そういう臆病なところとか、矜持が高いところとか、本当にそっくり。これがマルフォイだったらすごくムカつくところだけど……あなただとなんだか可愛いわね」
 にっこり笑う。白イタチは一瞬目をぱちくりさせると体を丸めて顔を埋めてしまった。
「でも最近思うの。マルフォイは強がってるんじゃないのかな、って。そんな風にいつも完璧な自分を装っていたらきっと疲れるわ。彼には全てを見せられるような、そんな人がいるのかしら。家柄に縛られずに彼を見てくれるような人が………って私、また色々喋っちゃった。どうも相手があなただと口が軽くなるみたい」
 ハーマイオニーは白イタチを撫でる手は止めず、でも照れを隠すようにわずかに頭を振った。対する白イタチはされるがままにしている。少しの間そのまま白いふわふわな毛の感触を楽しんでいると、談話室が騒がしくなってきた。
「あら、もうみんな帰ってきたみたいね。あなたはどうする? このままここにいてもいいけど……クルックシャンクスが怖がらせちゃうかもしれないわ」
 白イタチはその名前にぴくっと反応するとじたばたと暴れ出した。
「やっぱりね。じゃあ中庭辺りまで連れていってあげるわ。乗りなさい」
 ハーマイオニーが差し出した手に素直に乗る。あんまり暴れないでね、と言ってハーマイオニーは談話室へ続く扉を開けた。談話室を通り抜ける間、白イタチに気付いたグリフィンドールの面々が声をかける。もちろんハリーとロンも例外ではない。
「そのイタチ、どうしたの?」
 そうハリーが問いかけると、ロンが続く。
「あの猫が手に負えなくなったから乗り換えたんだろ」
「あら、失礼しちゃう。クルックシャンクスはれっきとした私の大切なペットです!この白イタチはさっき廊下でうずくまってるのを見つけて怪我を治してあげたの。今から外に放しにいくところなのよ」
「ふーん……あれ?ちょっと待てよ。この目……」
「ごめんなさい。急いで行かないと外出禁止時間に間に合わないから」
 ロンの言葉を無理やり遮って太った婦人の肖像画をくぐった。そこでふぅ、と息を吐く。言葉の続きはなんとなく予想がついた。予想がついたから思わず遮って逃げるように出てきてしまった。(だからそんなことありえないってば)無意識に早くなっていた鼓動を落ち着けるように白イタチの背を撫でる。少し震える指に気付いてか、白イタチがハーマイオニーの顔を見上げた。
「ね、そんなことありえないわ」
 優しい目で手の上の白い生き物に笑いかけると、ハーマイオニーは月の輝く中庭へと向かった。



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***
ベッドの上をちょこちょこ歩きまわるイタチちゃんに、
クルックシャンクスっていう言葉にビビっちゃうイタチちゃん……あぁ可愛い。(ぇ)
基本的にハーちゃんはドラコ氏単体はそんなに嫌ってない設定。
……ドラハにはなんて都合のいい設定。爆
     Ferret’s Tail -2-


 
 結論から言うと、マルフォイの姿は大広間のどこにも見られなかった。ハーマイオニーがあまりに何度も背後のテーブルに目を走らせるので、ロンが料理を口いっぱいに頬張りながら
「一体スリザリンンの何がそんなに気になるのさ?」
と聞くほどだった。ハーマイオニーはマルフォイの名前とさっき会った白イタチの話が喉まで出かかったが、
「……いいえ、別に何でもないの」
と返した。
 もちろんハリーたちに知られて困るようなことはなかったけれど、なんとなく自分一人の中に留めておきたかったのだ。それに、彼のシルバーブロンドが羨ましいなんて言ったら、ロンの苦虫を噛み潰したようなしかめっ面が簡単に想像できた。(だって無駄な争いは避けたいもの)ハーマイオニーは自分にそう言い聞かせて、二人より一足先に大広間を後にしたのだった。
 まさかその先の廊下に、さっき逃げられた白いふわふわが丸まっているなんて思いもしなかった。
 
「……っ、どうしたの!」
 ハーマイオニーは慌てて駆け寄りしゃがみ込む。白い毛並みに手を伸ばして撫でるようにすると、白イタチはされるがままにしていた。というよりどうやら動けないようだった。丸まったまま、息をするたびに小さな体が上下に揺れている。ハーマイオニーはその体をそっと抱き上げた。
「怪我、してるのね」
 白イタチが丸まっていた先にあるのは各寮へ続く上りの階段。おそらくその上からこの廊下まで転がり落ちてしまったのだろう。でも夕食の時間だったのが幸いして廊下に人気はなく、踏み潰される心配はなかったというわけだ。
 どうするべきか。もちろんこのままここに置いていくわけにはいかないし、マダムポンフリーのところへ連れていくのが最良かもしれない。ハーマイオニー自身も怪我を直す魔法を使えないわけではなかったが、相手は人間ではないから失敗したら困る。魔法生物飼育学のハグリットは……いくら友達だとしても、さすがに治療を任せるには不安だった。
「とりあえず医務室に連れていくわね。……と、どうしたの?」
 その言葉を聞いたとたん、急に白イタチが動き出した。弱々しいながらも鳴き声を上げている。
「だめよ、動いたら怪我が酷くなってしまうわ」
 しかし白イタチはなおも逃れようとする。逃がさない程度に握っていたハーマイオニーの手を噛んだ。ハーマイオニーは痛っ、と声を上げるがその手を緩めることはしなかった。手の中で暴れる白イタチに向かって呆れたように呟く。
「一体なんだっていうの? そんなにマダムポンフリーが嫌なの?」
 キィキィ声を上げて抗議を続ける白イタチを見て、はぁ、とため息をついたハーマイオニーは、口調を強めて言った。
「わかったわ。医務室には連れていかない。でもその替わりに私の部屋まで連れていくから、大人しくしていなさい。……私の魔法がどれくらい効くかはわからないけれど、やらないよりはマシでしょ」
 途端に大人しくなった白イタチの目を覗き込んで続ける。
「だから、そんな怪我で逃げようなんて考えないでね。絶対今度は逃がしてやらないんだから」
 白イタチは目を細めてキュウ、と一言鳴き、さっき噛んだハーマイオニーの手をペロッと舐めた。



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***
 ドラコ氏のいない謎が解明されずごめんなさい。
でも白イタチちゃんをキュウキュウ鳴かせるのが楽しかったです笑。
次はハーちゃんのえぴすきー!でございます(ぇ)
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