思うがままにつづったこころの中。その2
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第1章 再会 -Re:encounter-
スコットランドの首都・エジンバラ。
年明けを迎えて一週間後。やっといつもの落ち着きを取り戻しつつある街中で、ハーマイオニーの足取りはやけに軽かった。お気に入りの作家の新刊を手に入れるために、今日は仕事を早めに切り上げたのだ。
日没が早いこの時期、メインストリートは既に仕事を終えてパブで飲もうかという人で溢れている。年明け最初の週末がやっと来たのを喜んでいるようだった。ハーマイオニーはそんな人々の間をすり抜け、メインストリートの片側にある本屋へ向かった。
(またシェリーに何か言われるわね)
シェリーはハーマイオニーの仕事の同僚でありフラットメイトだ。彼女はハーマイオニーの部屋を覗くたびに、その本の多さはどうにかならないのか、と呆れるのだ。もちろん彼女がそう言うのも無理はない。ハーマイオニーの部屋は壁のある一面が本棚になっていて、そこにぎっしりと本が並べられているからだった。
本屋のショーウィンドウから平積みされた目的の本があるのを認めて、ハーマイオニーはほっと一息つく。いざ入ろうとドアノブに手を掛けると、カラン、と軽やかな音を立ててドアが内側へと開いた。
ありがとうございます、と言ってドアをくぐり、すれ違う。視界の端を見覚えのある色がかすめて、ハーマイオニーは反射的に振り返った。閉じかかったドアの装飾の向こうにメインストリートへ出たその人の後姿を捉えて、ひゅっと息をのむ。
学生時代に散々見た、忘れるはずもないシルバーブロンド。ドアが閉まる直前に手を伸ばして、雑踏に紛れる前に、と思わず声を上げていた。
「マルフォイ!!」
メインストリートに出たハーマイオニーの後ろで、カラン、とドアが閉まった。
「グレンジャー……?」
立ち止まって振り返ったその人はハーマイオニーを認識して、少し驚きの混ざった声で呟いた。ドラコ・マルフォイ。その声にもう敵意は見られない。
(お互いもう子供ではないんだし、当たり前よね)
ハーマイオニーはそんなドラコの変化に頬を綻ばせた。あの頃の自分なら気付かないふりをして遠ざかっていくのを待つだけだっただろう。黙って後をつけるなんてあの黒髪の少年の真似はしないけれど、少なくとも声をかけて自分の存在を伝えるなんてことはしなかった。それでもさっき条件反射のように口を開いてしまったのは……あまり気持ちの良い別れ方をしなかったこと、どこかで気にしていたからかもしれない。
「びっくりしたわ。こんなところで会うなんて」
そしてほんの少しだけ、敵意のないその声に興味を持ってしまった。
「ね、あなたも仕事終わりかしら?」
「……あぁ」
「じゃあこの後ヒマでしょ?」
「まぁそうだが……」
形の良い眉がひゅっと寄せられる。疑い深く細められたアイスブルーの瞳を前にハーマイオニーは笑顔で告げた。
「じゃあちょっとお茶でもしていかない?」
まだ目的の本を手に入れてないことを思い出し、すぐ終わるからちょっと待ってて、と言い残して店内に入ったハーマイオニーだったが、会計を終えて店を出るとドラコがまだ店の前に立っていたから驚いた。
「あら、本当に待ってたの」
「お前が待ってろといったんだろう」
「それはそうだけど……」
(あのマルフォイのことだから帰っちゃったかと思った)
そんな些細な変化にハーマイオニーが笑みを零すと、頭上から不機嫌な声が降ってきた。
「で、どこへ行くって? 不味い店だったら容赦しないからな」
to be continued.....
**********
と、いうことでデート(違)直前で切らせていただきます。
今の段階ではあくまでもドラ+ハー。お互いへの敵意はなくなった、くらいの設定です。
そして舞台がエジンバラなのは完全にMieの趣味(笑)
なぜ二人はこんなところで出会っちゃったのか?
次のお話では捏造ばっちりな二人の卒業後が語られます。
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スコットランドの首都・エジンバラ。
年明けを迎えて一週間後。やっといつもの落ち着きを取り戻しつつある街中で、ハーマイオニーの足取りはやけに軽かった。お気に入りの作家の新刊を手に入れるために、今日は仕事を早めに切り上げたのだ。
日没が早いこの時期、メインストリートは既に仕事を終えてパブで飲もうかという人で溢れている。年明け最初の週末がやっと来たのを喜んでいるようだった。ハーマイオニーはそんな人々の間をすり抜け、メインストリートの片側にある本屋へ向かった。
(またシェリーに何か言われるわね)
シェリーはハーマイオニーの仕事の同僚でありフラットメイトだ。彼女はハーマイオニーの部屋を覗くたびに、その本の多さはどうにかならないのか、と呆れるのだ。もちろん彼女がそう言うのも無理はない。ハーマイオニーの部屋は壁のある一面が本棚になっていて、そこにぎっしりと本が並べられているからだった。
本屋のショーウィンドウから平積みされた目的の本があるのを認めて、ハーマイオニーはほっと一息つく。いざ入ろうとドアノブに手を掛けると、カラン、と軽やかな音を立ててドアが内側へと開いた。
ありがとうございます、と言ってドアをくぐり、すれ違う。視界の端を見覚えのある色がかすめて、ハーマイオニーは反射的に振り返った。閉じかかったドアの装飾の向こうにメインストリートへ出たその人の後姿を捉えて、ひゅっと息をのむ。
学生時代に散々見た、忘れるはずもないシルバーブロンド。ドアが閉まる直前に手を伸ばして、雑踏に紛れる前に、と思わず声を上げていた。
「マルフォイ!!」
メインストリートに出たハーマイオニーの後ろで、カラン、とドアが閉まった。
「グレンジャー……?」
立ち止まって振り返ったその人はハーマイオニーを認識して、少し驚きの混ざった声で呟いた。ドラコ・マルフォイ。その声にもう敵意は見られない。
(お互いもう子供ではないんだし、当たり前よね)
ハーマイオニーはそんなドラコの変化に頬を綻ばせた。あの頃の自分なら気付かないふりをして遠ざかっていくのを待つだけだっただろう。黙って後をつけるなんてあの黒髪の少年の真似はしないけれど、少なくとも声をかけて自分の存在を伝えるなんてことはしなかった。それでもさっき条件反射のように口を開いてしまったのは……あまり気持ちの良い別れ方をしなかったこと、どこかで気にしていたからかもしれない。
「びっくりしたわ。こんなところで会うなんて」
そしてほんの少しだけ、敵意のないその声に興味を持ってしまった。
「ね、あなたも仕事終わりかしら?」
「……あぁ」
「じゃあこの後ヒマでしょ?」
「まぁそうだが……」
形の良い眉がひゅっと寄せられる。疑い深く細められたアイスブルーの瞳を前にハーマイオニーは笑顔で告げた。
「じゃあちょっとお茶でもしていかない?」
まだ目的の本を手に入れてないことを思い出し、すぐ終わるからちょっと待ってて、と言い残して店内に入ったハーマイオニーだったが、会計を終えて店を出るとドラコがまだ店の前に立っていたから驚いた。
「あら、本当に待ってたの」
「お前が待ってろといったんだろう」
「それはそうだけど……」
(あのマルフォイのことだから帰っちゃったかと思った)
そんな些細な変化にハーマイオニーが笑みを零すと、頭上から不機嫌な声が降ってきた。
「で、どこへ行くって? 不味い店だったら容赦しないからな」
いるはずのないひと
(日常が変わる音が、鳴った)
to be continued.....
**********
と、いうことでデート(違)直前で切らせていただきます。
今の段階ではあくまでもドラ+ハー。お互いへの敵意はなくなった、くらいの設定です。
そして舞台がエジンバラなのは完全にMieの趣味(笑)
なぜ二人はこんなところで出会っちゃったのか?
次のお話では捏造ばっちりな二人の卒業後が語られます。
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迷い猫を、拾った。
プロローグ -Prologue-
(……なぜ、こうなった)
ドラコは一人途方に暮れた。目の前のソファで気持ちよさそうに寝息を立てているのは栗色の髪。
「ん……」
それは狭いソファの上で動きづらそうに寝返りをうって、白い肌と微かに顰めた眉を見せた。ドラコは少し身を固くしたが、再び聞こえた規則正しい寝息にふっと息を吐く。
(まったく……家まで連れてくるなんてどうかしてる)
ドラコはなるべく音を立てないようにリビングを抜け出し、寝室のドアを閉めた。ベッド脇にある座り心地のいい椅子に深く腰を下ろして天井を見上げ、この数時間の間に起きた出来事を振り返ってみる。色々な偶然が重なって、そんなつもりは毛頭なかったのに、なぜか今、自分のテリトリーに彼女がいるのだ。
これからどうしようか……真っ先に二人の顔が浮かんで、ドラコは自嘲的な笑みを漏らした。今の状況を知った彼らがどんな反応をするか、手に取るようにわかる。
(まずはあのウィーズリーが怒鳴りこんでくるな)
ドラコにとって非常に分が悪い展開になるのは目に見えていたが、このままここに居座られるよりはいい。それなら梟便を、と机の引き出しから羊皮紙を取り出した時だった。
カチャリ、とドアノブを回す音がして顔を上げる。
「あの……ドラコさん?」
「あぁ、目が覚めたのか、グレンジャー」
書斎の入口にふらりと立って心もとない目でドラコを見ているのは、先ほどまでソファで眠りに落ちていた彼女だった。
to be continued.....
**********
と、いうわけで。時間もないのに新連載(笑)
ハーちゃんに何があった!? なぜドラコのところにいるの!?
すぐにはわかりませんが、あと2、3話で明らかになるかと思われます。
タイトルはストーリーにもちろん沿ってますが、響きが可愛い感じで並べてみました。
ではでは、続きもお楽しみくださいませー
My Little Lost Cat
プロローグ -Prologue-
(……なぜ、こうなった)
ドラコは一人途方に暮れた。目の前のソファで気持ちよさそうに寝息を立てているのは栗色の髪。
「ん……」
それは狭いソファの上で動きづらそうに寝返りをうって、白い肌と微かに顰めた眉を見せた。ドラコは少し身を固くしたが、再び聞こえた規則正しい寝息にふっと息を吐く。
(まったく……家まで連れてくるなんてどうかしてる)
ドラコはなるべく音を立てないようにリビングを抜け出し、寝室のドアを閉めた。ベッド脇にある座り心地のいい椅子に深く腰を下ろして天井を見上げ、この数時間の間に起きた出来事を振り返ってみる。色々な偶然が重なって、そんなつもりは毛頭なかったのに、なぜか今、自分のテリトリーに彼女がいるのだ。
これからどうしようか……真っ先に二人の顔が浮かんで、ドラコは自嘲的な笑みを漏らした。今の状況を知った彼らがどんな反応をするか、手に取るようにわかる。
(まずはあのウィーズリーが怒鳴りこんでくるな)
ドラコにとって非常に分が悪い展開になるのは目に見えていたが、このままここに居座られるよりはいい。それなら梟便を、と机の引き出しから羊皮紙を取り出した時だった。
カチャリ、とドアノブを回す音がして顔を上げる。
「あの……ドラコさん?」
「あぁ、目が覚めたのか、グレンジャー」
書斎の入口にふらりと立って心もとない目でドラコを見ているのは、先ほどまでソファで眠りに落ちていた彼女だった。
to be continued.....
**********
と、いうわけで。時間もないのに新連載(笑)
ハーちゃんに何があった!? なぜドラコのところにいるの!?
すぐにはわかりませんが、あと2、3話で明らかになるかと思われます。
タイトルはストーリーにもちろん沿ってますが、響きが可愛い感じで並べてみました。
ではでは、続きもお楽しみくださいませー
「それに…ロンは親友だもの」
「僕は?」
「え…」
「僕は君の何?」
「何、って…」
「僕は君の恋人だろう!」
声を荒げてしまった僕にグレンジャーの身体がピクリと跳ねる。
「マ、マルフォイ。貴方、私がロンと仲良くしてたから怒ってるんでしょう? でも私にとって親友のロンも恋人の貴方も同じくらい大切な……」
「そんなことに怒ってるんじゃない!!」
勢い余ってその細い肩を強く掴んでしまった。グレンジャーの目にみるみる涙が溜まっていくのに気付いてはっと我に返る。
「いや、悪い……」
彼女を怖がらせてしまったという自己嫌悪に陥るのは、マルフォイ家の跡継ぎとして教えられた紳士の振舞いのせいかもしれない。それは体に染み込んで永遠に逃げられない「家柄」という呪縛を表しているようでぞっとした。
「そんなことじゃ、ないんだ」
わかっている。ホグワーツに入学してから様々な事件を乗り越えて絆を深めた親友2人を、グレンジャーがどんなに大切に思っているかなんてわかっている。僕と彼女の間にそれが存在しないことを今さら嘆いたりしないし、彼らと過ごす時間を無理に奪おうなんて思わない。
でも、一つだけ、どうしてもやめてほしかった。
「いつも、怖いんだ」
僕の手が震えているのに気づいて、グレンジャーがひゅっと息を呑んだ気配がした。
「君が僕の手をすり抜けていなくなってしまう気がして」
「マルフォイ……」
俯いた僕の頬に温かい手が触れた。それが紛れもなくグレンジャーのものだとわかって、これだけは言うまいとしていた僕のちっぽけなプライドは崩れてしまった。視界が歪んでいく。
「今日も、君に抱きつかれて真っ赤になったウィーズリーを見て、焦った。君を盗られてしまうと、そう思った」
「ロンは親友よ。そんなつもりはな……」
「でもあいつは違う!」
抗議に顔を上げると、グレンジャーはきょとんとした目で僕を見ていた。途端、泣き顔を見られてしまった恥ずかしさで自分の頬が熱くなるのがわかる。
「君はただ喜びを表現したかっただけでも、ウィーズリーにとっては違う。……あいつは、君を好きだ。」
目を逸らしてぽつりと呟いた。
「相手がウィーズリーなら、何も問題はないんだ。僕がマルフォイ家の長男だってことも、君がマグル出身だってことも、あいつとなら気にしなくていいんだ。だから余計に怖……」
「……ごめんなさい」
言葉と共にグレンジャーの香りにふわりと包まれた。首筋をくすぐる言葉に体がピクリと反応する。抱きしめられているのだと気付くまでに少し思考が止まった。
「不安にさせて、ごめんなさい。でも、貴方へのこれは特別なの」
身長差のせいで、首に回されたグレンジャーの手にはひどく力がこもっていた。爪先立ちでふらふらと震えているのに、決してその腕を離そうとせず1ミリの隙間もないようにぎゅっと体を寄せる。その近さに高鳴る心臓が、震える声に表れてしまった。
「……どう違う?」
「こんなに近くにいて、ドキドキして、苦しくて、幸せになるのは貴方だけよ」
その言葉で必死に伝えようとした彼女の想いに至って、緊張と不安で固まっていた頬が緩んだ。たったそれだけの言葉でイライラが嘘のように消えていく。
「解決しなきゃいけない問題が山積みなのはわかってる。でも私は、逃げたりしないわ。楽な方を選んで貴方の手を離したりはしない」
あぁそうだ。彼女はこんなにも強い。その強さに惹かれたのだと改めて思い至った。
少し背を屈め、グレンジャーの背中に腕を回して力を込めた。痛くないくらい、でも決して離さないくらい強く。ふわふわの髪から赤い耳が覗いて、同じように真っ赤に染まっているだろう彼女の顔を想像しながらクスリと笑ってしまった。
「何よ?」
「こんなに顔を赤くするのも僕だけか?」
「……そうよ、悪い?」
グレンジャーらしい強気な口調。
「いい。僕も同じだから」
彼女の心地いい鼓動を感じながら、その栗色の髪に顔を埋めた。
きみがくれた存在証明
(ピンと伸びた背が、ひどく眩しかった)
*おまけ*
「……そろそろ離してくれない?」
「嫌だ」
「誰か来るかも…」
「約束したら離してやる」
「何?」
「あの2人に抱きつくのだけはやめてくれ」
「………」
「おい、何悩んでる」
「……でも、あれはつい、癖っていうか……」
「グレンジャー……」
「い、たい痛い痛い! じゃあ努力するわ!」
「ハーマイオニー??」
「!! わ、わかった、絶対しないわよ!!」
「ん。よかった。……」
「~~~っっ!!」
あ、あっれー??ハー子の抱きつき癖に嫉妬するドラコを書きたかったんだけど…
やけにシリアスになってしまいました。
でもドラコって常にハー子に対して負い目を感じていると思います。
果たして自分は彼女を幸せに出来るのか??
そこで「幸せにしてやるよ!」と宣言出来ないのがヘタレなドラコ。
「そんなもの乗り越えてやるわ!」と言い切れちゃうのがハー子。
それくらいのバランスがこの二人には似合ってると思います。
ちなみに*おまけ*の最後はちゅーですw
僕らが出会ってからの5年間。君のその無防備な行動に何度惑わされたことか、それが僕の心をどれだけ掻き乱しているか、きっと君は気づいていないだろう。
その証拠にほら、君はまた僕の目の前でそんな振舞いをする……。
「ロン、凄いわ!」
「わっ、ちょ、ハーマイオニー!」
「無失点に抑えるなんて流石ね!」
グリフィンドールの勝利に終わったクィディッチの興奮冷めらやないフィールド内で、背後に愛しい声と大嫌いな声の組み合わせを聞いてしまった。寮へ戻るはずの足は止まり、知らず眉間にしわが寄る。あの声の跳ねる感じ、赤毛の慌てた反応、不愉快になると頭では分かっていたが、振り返って確認せずにはいられなかった。
「……またか、あの女」
予想通りの光景。髪の毛と同じ色に染まったウィーズリーの顔と、その少し下に埋まったふわふわの髪。本当は今すぐ二人の間に割って入りたかったが、視線を無理やり剥がして唇を噛みしめた。この1年で学んだのだ。このまま行ったら思ってもいない言葉までグレンジャーにぶつけてしまうと。だから動けなかった。
ふぅ、と気持ちを落ちつかせるように息を吐く。視界の隅で栗色の髪が赤毛から離れたのを捉えた。反射的に顔を上げると、グレンジャーと目がかち合った。僕の視線から何かを感じ取ったのかもしれない、あ…、と小さくあげた声がざわめきの中でも確実に僕の耳に届いた。
そのまま僕の元に来てくれればよかったのに。彼女はそうしなかった。ウィーズリーと僕を交互に見て困ったような表情をするグレンジャーに、イライラが募っていく。彼女が行動を起こす前に、ふいと背を向けて歩き出した。
「あ……ロン、ごめんなさい、また談話室でね」
そんな声が聞こえて僕は更に歩みを速めた。自分の名前を呼ぶ声が聞こえたが、立ち止まりはしなかった。最初に呼んではくれないのか、なんて些細なことでイライラする自分に舌打ちした。
「マルフォイ!」
寮に一番近い城の入口で、ぐいっとローブを引かれた。周囲に人影がないことを確認して振り返ると、走って来たらしく息を切らすグレンジャーの姿があった。
「何か?」
はぁ、と一つため息をついて冷たく返した言葉に、グレンジャーの瞳がふるると揺らぐ。
「何か……って、聞きたいのはこっちよ。何怒ってるの?」
「別に怒ってない」
「……ロンのこと?」
今一番聞きたくない名前を、しかも後ろめたそうに言うグレンジャーにピクリと眉毛が上がる。そんな僕の反応を見ると、少し躊躇ってからグレンジャーは話し出した。
「……あのね、貴方ならわかってくれるでしょう? 私はグリフィンドール生なの。自分の寮の勝利で盛り上がるのは当然だし、それに一役買ったのはロンよ。上がり症の彼があそこまで力を出したんだから……うんと褒めて自信をつけさせたかったの」
あぁもう、それ以上言うな。寮の隔たりを今さら実感させるのも、ウィーズリーについて君の口から語るのも、そしてそれを言い訳のように並べたてるのも、全部やめてくれ。僕が腹を立てている直接の原因は違うのだから、余計なことを言って更に僕の冷静さを奪わないでくれ。
だけど次に発したグレンジャーの言葉に、とうとう我慢できなくなった。
「それに…ロンは親友だもの」
そんな無邪気に触れないで
(君にふさわしいのは、僕じゃない)
**********
えーっと、続きます。でも次で終わります。
一応6年生設定捏造。ドラハはすでに恋人です。
最近ドラハばかり増えますねー。でもやっぱりこの組み合わせ大好きです。
「あっ、もう……」
新学期の初日、ホグワーツへと向かう列車のとあるコンパートメントの中。羊皮紙に何度目かの大きなシミを作ったハーマイオニーが声をあげた。
「また書き直し! どうして魔法の世界なのにこう面倒なの。こんなの紙とボールペンでいいじゃない!」
「……おい、ハリー」
向かい側でイライラするハーマイオニーを見ながら、ロンがハリーに隣に耳打ちした。
「何?」
「ハーマイオニー、さっきからやけに機嫌悪くないか? 列車に乗るまでは普通だったのに……一体何があったんだ?」
「……」
日刊預言者新聞の影からハーマイオニーの様子を見て、ハリーは少し考える。列車に乗ってからこのコンパートメントに着くまでに見た光景を思い出して、あぁ、と小さく声を上げた。その僅かな反応もロンは見逃さない。
「お、知ってるのか?」
「まぁ、心当たりがないわけじゃないんだけど……」
「言ってみろよ」
「でも間違ってたらハーマイオニーに悪いし」
「いいから」
ある種の好奇心で目を輝かせているロンに、少し思案するような顔をするとハリーはにっこり笑いかけた。
「やっぱり内緒だ」
「何だよ、それ。知ってるんだろ? ちょっとくらい教えてくれても……」
「ちょっと二人とも! 何コソコソしてるの!」
知らないうちに声のボリュームを上げてしまったロンは固まった。羊皮紙から顔を上げたハーマイオニーの目が二人を睨みつけている。どうやら彼女のイライラの矛先が、羊皮紙から目の前の二人の親友へと移ってしまったようだ。
「あ、えっと……」
「君のイライラしてるわけをロンが知りたいんだって」
「ばっ…ハリー!!」
慌てるロンの右には黒髪の少年の満面の笑み、左には目の吊り上がった栗色の髪の少女。
「ロンには関係のないことでしょう!!」
予想通りハーマイオニーの雷が落ちた。勉強道具をまとめるとコンパートメントを出ていってしまう。
あっけにとられたロンの隣で、ほらね、とハリーが囁いた。半分は君のせいだろう、とロンが冷たい視線を送ったが、彼は肩をすくめて再び日刊預言者新聞に隠れてしまった。ロンは仕方なくハリーへの抗議を諦めて、座席に深く座り込むと窓の外に流れるイングランドの町並みに目をやる。
「なんで僕だけ怒られるんだよ……」
はぁっと大きくため息をついた。
**********
「八つ当たりなんて私らしくない……」
その頃、二人の姿が見えなくなったところでハーマイオニーはロンと同じような思い息を吐いていた。
他の誰かと笑わないで
(慣れていた、はずだったのに)
**********
全然ドラコ出てなくて申し訳ない。
ちゃんと終わるといいな……(ぇ。